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コロナ禍の国内旅行需要 気になる他国の事情は?

2020.08.14

ホテ研

こんにちは。フォルシアの小孫です。社内有志メンバーによって発足したホテル・旅館研究室略して「ホテ研」では、宿泊施設の皆さんがwithコロナの経営を乗り切るヒントとなるようなニュースを発信していきます。

第2回はコロナ禍での日本の国内旅行需要について、世界各国との比較から考察してみます。

世界との比較からヒントを探す

観光庁が2020年7月17日に発表した今年5月の「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、新型コロナウイルスの感染拡大により、国内旅行の取扱額は前年比3.4%と大幅に落ち込みました。

5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されたため、6月の国内旅行の取扱状況はこれよりも回復しているようですが、7月に入って再び感染者数が増加している中で開始が発表されたGo Toトラベル事業は大きな議論を呼びました。

このように国内の旅行業・宿泊業は依然として難しい状況に置かれていますが、世界の状況を知ることで何かヒントが見つかるのではないかと考えました。

世界では国内旅行需要の回復が目立つ

宿泊施設向けのソリューションを提供するD-EDGE社は、自社のサービスを利用した宿泊予約のデータを「ホスピタリティー・リカバリー・トラッカー」として公開しています。

https://www.d-edge.com/ja/hospitality-recovery-tracker/

世界各国の宿泊予約数の推移を昨年と比較することで、旅行需要の回復の様子が一目でわかるようになっています。D-EDGE社のデータを見ることで、日本国内と世界の旅行需要の大まかな比較ができそうです。
(ただし、世界で最も感染者数が多いアメリカ、ブラジル、インドのデータは含まれていません。また、D-EDGE社のパートナーには外資系の主要OTAがほとんど含まれている一方で、日本国内の企業は楽天トラベルのみのようです。)

データを見てわかったことを簡単にまとめると、

  • 日本の国内宿泊の予約数(予約された日での集計)は5月から6月にかけて徐々に回復
  • しかし夏休みシーズンを前に減少に転じ、7月は昨年の半分程度
  • 世界全体の国内宿泊の予約数は4月の末から回復し始め、6月以降は昨年を大きく超えている
  • アジアの7月の国内宿泊予約数は、中国はデータが少なくはっきりとはわからないものの、韓国は昨年と同程度、台湾や、タイ、ベトナム、マレーシアは昨年を大きく上回っている(ただしベトナムは7月25日に約3か月ぶりの市中感染者が出て以降、急激に減少)
  • ヨーロッパの7月の国内宿泊予約数は、イギリス、スペインは昨年の7割程度、イタリア、ドイツは昨年と同程度、フランスは昨年を上回っている

新型コロナの感染者数が比較的少なかったアジアの国々では、海外旅行に行けないのもあって、早い時期から盛んに国内旅行が行われているようです。
また新型コロナの被害を大きく受けたヨーロッパでも、感染者数の落ち着きとともに国内旅行が着実に回復しています。

一方の日本では、7月以降の感染者数の急増もあって国内旅行の回復は鈍化しています。第一波の時に検査数を抑えたために第二波の感染者数が際立っていることや、例年以上に長引いた梅雨の影響など、日本特有の事情も原因として考えられます。もちろんD-EDGE社の集計対象外のところで多くの宿泊予約が行われている可能性もあります。

元フォルシアインターンのフランス人に聞く「日本とフランスの違いとは?」

データを踏まえたうえでさらに具体的な状況を知るために、以前弊社で働いていて、現在はフランスで暮らしているフランス人エンジニアのセブケットさんに現在のフランスの状況を聞いてみることにしました。

フランスでは3月から4月にかけて新型コロナによる甚大な被害を受けましたが、ロックダウンを経て感染者数は落ち着きました。国内宿泊の予約数は5月半ばから回復し始め、6月下旬以降は昨年を上回っている状態です。ただ7月以降、感染者数は再び増加傾向にあります。

セブケットさんによると、

  • フランスでは日本のGo Toトラベルのように政府が旅行を推奨しているわけではない。制限もしていない
  • バカンスの時期ということもあり旅行に出かける人は多いが、国内旅行が中心
  • 先日南フランスを旅行したが、聞こえてくるのはほとんどフランス語で国内旅行客が多い印象
  • 公共交通機関でマスクを着用していないと罰金が課されたり、タクシーには2人までしか乗れなかったりするなどの制限はある
  • 南フランスまでの新幹線でも3回見回りが来た

フランスでは当初新型コロナの流行を「なめていた」そうで、そもそもマスク自体なかなか売っていなかったそうです。しかし感染拡大により大変な被害を受けたことで、流行が落ち着いてからも締めるところはしっかり締めているようです。

そんな中でも旅行需要が大きく回復しているのは、セブケットさんが言っていた「フランス人にとってバカンスは一番大切だから」という理由が大きいと感じます。日本では仕事であればリモートワークが可能であっても通勤するのに、旅行となるとなんとなく自粛した方がよさそうという雰囲気があります。そのような空気感が旅行需要の回復に影響を与えていそうです。

安心して旅行できるようになるためには

もう一点個人的に感じたのは、正解が分からない時にはとりあえずやめておくという慎重な国民性が、日本の旅行需要の回復に影響を与えているのではないかということです。

新型コロナ流行の初期にはこの性質のおかげでヨーロッパほどの感染拡大には至らなかった部分もありそうです。しかし流行が比較的落ち着いている時期であっても、この性質によってなかなか旅行に踏み出しにくいのかもしれません。

そう考えると、旅行がその他の社会活動と比較してどれだけ感染拡大につながっているのかを具体的なデータで明らかにできれば、安心して旅行できるようになるのではないでしょうか。

また旅行と感染拡大防止を両立するためには、締めるところはしっかり締めることも必要です。

  • 旅行の2週間前から会食を控える
  • 可能であれば旅行前にPCR検査を受ける
  • 医療体制が逼迫している地域への旅行は控える
  • 旅行中はマスク着用を徹底し、三密を避ける

など、旅行者の行動変容を促す環境を整えることが必要だと思います。

さいごに

今回データを調べてみて、世界各国で国内旅行が想像以上に活発に行われていることに驚きました。

新型ウイルスの流行というなかなか先を見通しにくい状況では、どうしても不安が先行してしまいます。しかし同じような状況に置かれている世界各国の様子を知ることで、日本の状況を客観的に見つめ直すことができると感じました。

一方で、国内旅行が活発に行われている国々でも感染者が再び増加してきています。
引き続き、旅行と感染拡大防止を両立するための国内外の施策をウォッチしていきます。

この記事を書いた人

小孫 一浩

エンジニアの枠組みにとらわれず、旅行業の今後について考えます。
東北の豊かな自然と美味しいごはん、野趣あふれる温泉が好きです。