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汎用的な理論創出を目指す フォルシアのダイナミックプライシング構想

2018.10.24

共同研究 ダイナミックプライシング テクノロジー

2017年新卒入社エンジニアの新谷です。フォルシアでは、検索エンジニア 兼 ダイナミックプライシングの構想企画/研究開発/事業開発を担当しています。学生時代は数理工学の研究をしていました。
今回は、先日ご紹介した京都大学との共同記者会見で発表した研究テーマ「ダイナミックプライシング」について、具体的な構想をご説明します。

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ダイナミックプライシングとは

先日、USJが入場券に変動価格性を導入することを発表し、話題となっているダイナミックプライシング。一言で言うと、ダイナミックプライシングとは、需要と供給に応じて価格を調整し、売り手と買い手の適切なマッチングを実現する手段です。航空券やホテル、イベントチケットなどで広がる売り手も買い手もハッピーなこの仕組みを、より多くの商材に適用して世の中に広めていこう、というのがこの研究/事業の趣旨です。
経済産業省のレポートでも、2030年代に確実に起こる未来としてダイナミックプライシングが取り上げられており、今後どんどん広がっていくことが予想されています。

従来ダイナミックプライシングには適性がある

まず、従来のダイナミックプライシングについて、航空券を例にご説明します。購入可能な座席数が多い売り始め期、先の予定が決まっている買い手は少なく需要が小さいために、航空券は比較的安価で購入することができます。一方、フライト直前期は、購入可能な座席数が少なく需要が大きくなるために、高額になるといった仕組みで導入されています。
この方法が適するのは、「この日じゃないといけない」という性質の強い商材であり(他にもいろいろ理由はありますがここでは割愛)、ゆえに航空券やホテル、イベントチケットなどには先行して導入されています。逆に、「この日じゃなくてもいいな」という性質が比較的強いサービス(映画館などのレジャー、医療サービス、美容院など)には、なかなか適用されにくい現状があります。

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ダイナミックプライシングが広がっていく時流を踏まえると、この適性の有無の問題は避けて通れない道です。

フォルシアの扱うダイナミックプライシングとは

「期間」×「利用頻度」の観点を設け、全体最適を求める

着目したのは、売買における共通構造。在庫の概念を伴うあらゆる商品の売買には、「提供可能な枠を埋めていく」という共通した性質があり、枠の埋まり具合のバラツキが、機会損失であるとされています。我々は、航空券や映画館、引いてはサービスに限らずモノに至るまで共通する、この「枠を埋める」構造に着目し、あらゆる商材の枠を効率的に埋めていくにはというアプローチでダイナミックプライシングを捉えています。
これをベースとした以下の考え方が、フォルシアのやろうとしているアプローチです。

  • 一回一日という単位ではなく、一定期間での「枠」と考える
  • 個人の利用頻度/利用額と空き状況を元にし、人ごとに適切な価格とタイミングを提示する
  • これを毎日、全ての利用者に対して実施することで、全体として効率的に枠を埋め、機会損失を解消する

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この考え方はつまり、「この商品をいくらで売ると、その枠の何%が埋まるのか」といったような、商品一体を一つとした価格設定ではなく、「人にいついくらで利用してもらうか」といった、個人単位でのダイナミックプライシングとして見ることができます。

ダイナミックプライシングの汎用理論創出へ

利用頻度と空き状況を元に機会損失を解消していくこのアプローチは、数理的構造として商材間に差はありません。ゆえに、広く適用できる汎用理論を作ることができると考えています。今はまだないダイナミックプライシングに関する汎用的な数理モデルを、こういったアプローチで構築していこうとしています。

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まとめ

これからスタートするこの研究/事業は、さまざまな業界で機会損失が解消されることを目指しており、道のりとしては、パートナー企業と共にさまざまな業界データを使って実証実験を繰り返し、少しずつ形になっていくものだと思っています。
また、記者会見でも多数質問のあった、「個人ごとに価格が変わる、という文化は根付くのか?」という問題についても、人々の納得感が得られるかどうかが鍵となると考えています。公明正大でフェアな理論としての研究開発を進め、世の中に浸透するダイナミックプライシングの基盤作りを目指していきます。

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この記事を書いた人

新谷健

2017年新卒入社エンジニア

検索システムの設計から開発を担当。在職中、学生時代の研究が日経新聞に掲載されたことを機に、新企画ダイナミックプライシングの研究/事業開発にアサイン。ビジネス設計ができるエンジニアを目指す。

趣味・特技は水泳