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これからも「お客様と創る」 旅行業界の変化とともに

2022.12.22

役員 社員インタビュー

こんにちは、広報の見原です。

普段表に出る機会が少ないフォルシア役員4名へのインタビュー企画
今回は、フォルシアの顧客企業の中でも割合が高い旅行・観光業界向けの事業の統括をしている大西取締役に話を聞きました。

フォルシアは創業当初から長く、様々な旅行会社のWebサイトをシステム面で支えてきました。旅行商品購入においては、従前よりユーザーはパンフレットや店舗の窓口での予約からWebでの予約に緩やかに移行していましたが、新型コロナが流行するようになってから旅行業界のDXは加速度を増しました。

今回話を聞く大西取締役はフォルシアに入社する以前は、現在フォルシアのお客様でもある国内最大手の旅行会社でWebサイトの編集長を務めており、フォルシアから提案を受ける立場でもありました。

前半ではフォルシアの顧客サイドにいた当時感じていたフォルシアの魅力、後半では今後フォルシアが何を強みにしていくのかをお話しします。

旅行会社時代に感じていたフォルシアの魅力

旅行業務のデジタル改革は手探りでスタート

ー 大西取締役は、フォルシアでも長く旅行業界のお客様を担当していますが、フォルシア入社前も旅行業界が長かったのでしょうか。

そうですね。社会人になってからフォルシアに入社するまでの間ずっと旅行会社にいました。最初に入社した旅行会社では旅行の営業から企画・手配・添乗まですべて一通り経験しました。その中で、あらゆる業務が「3K=勘と経験と根性」というアナログな環境で、デジタル化がまったく進んでいない状況を目の当たりにして「何とかしないといけない」と強く感じました。

当時はインターネットの黎明期だったので、独学でHTMLを勉強してWebサイトでの集客に取り組み、IT化を使った業務の効率化や販売の拡大に注力しました。

ー きっとどこの会社も手探りでWebサイトを立ち上げていたのでしょうね。大西取締役はその後、別の旅行会社に移られて旅行商品のWeb販売に携わっていたということですが、詳細を教えてください。

フォルシアが創業した2001年と同じ年に国内最大手となる旅行会社へ転職しました。本社市場開発部で新規事業開発を行う部署に配属となり、新規事業の一つとしてWeb事業に取り組むことになりました。それまではWebの仕事はあくまで日常業務の片手間でやっていたので、Webの仕事だけやってお金がもらえるなんて、前職と比較すると夢のような世界でした。旅行会社に転職したというよりは、IT会社に転職したという感覚でしたね。

ー この記事を読んでいる方の中には、2000年代前半の旅行会社のWebサイトがどのようなものなのかを知らない方も多いかと思います。当時、旅行会社ではどのようなWebサイトを運営していたのでしょうか?

当時私が勤めていた旅行会社では、Web事業は新規事業という位置づけでした。ですので、ECサイトとしていくら売り上げるかという観点で販売サイトを構築するだけではなく、旅行の需要喚起をするためのコンテンツを作ってサイトの訪問者数をいかに上げられるかということも含めて取り組んでいました。

たとえば、私は日本全国の紅葉や桜のスポットの状況を1週間おきに写真で紹介するページを作って、旅行需要の喚起から旅行販売まで一気通貫したWebサイトを構築し運営していました。今でも似たようなWebサイトはありますよね。

また、私がいた旅行会社がメインで運営していたWebサイトでは、同じ宿泊プランでも契約形態によって販売システムもデータベースも異なるなど複雑なシステムで成り立っていました。その点は今と大きく異なる点と言えますね。

ー 当時はデータもシステムもバラバラだったのですね。具体的にはどのような点が課題であると考えていたのでしょうか?

これは一般的な話かもしれませんが、大企業の場合、部門部署ごとのビジネスが一定の規模があるので、その中で最適化された組織・システムが構築されてしまいがちだと思います。結果的に企業内での全体最適が図られていないことが多いですが、私のいた会社でもまさにその状態に陥っていました。基幹システムで保持している膨大な施設基本情報は店頭・法人向けにはしっかり整備されていました。たとえば、大浴場の情報は、温泉の泉質・効能だけではなく「蛇口の数」のようなニッチなものまでありました。この「蛇口の数」は何かというと、修学旅行でお風呂を何回転で回せるかということを考える際に使う情報で、タイムスケジュールを考える上では実は極めて重要な情報だったりしました。一方で、このような施設基本情報はWebでは十分に活用されていませんでした。

私は、この社内に埋もれる膨大で有益な情報をWebで活用することで新たなビジネスチャンスがあると確信しましたが、どうしたらそれを実現できるのか手探りの状態でした。

フォルシアの開発スタイル原点ここにあり

ー そのタイミングでフォルシアから提案を受けたということですね。どのような点が魅力でフォルシアのSpookを導入したのでしょうか?

当時、フォルシアのCEOとCOOから、宿泊施設の宿泊プランの在庫・料金を可視化するデモサイトのプレゼンテーションを受けました。プレゼンテーションを聞いて、私は自社(当時勤めていた旅行会社)の膨大な施設基本情報や宿泊プランの在庫・料金をこのシステムを使って見せることができたら面白いことになるぞと思い、具体的な導入の検討を開始しました。

当時はタイミングよくシステムの刷新時期と重なり、別プロジェクトで複数のシステムのデータベースを統合し、数百件以上のこだわり条件として管理するデータベースの構築を進めていました。Spookを導入した場合、このデータベースを使ってどのようにお客様にわかりやすく伝えることができるのか、検討を重ねていきました。

検討に当たっては幾多の試行錯誤はありましたが、当時のフォルシアのエンジニアにプロトタイプを作ってもらいながら一緒に開発を進めた結果、素晴らしいシステムを構築することができました。

「お客様と一緒に創る」という今のフォルシアの開発スタイルの原点とも言えるものがフォルシアの技術と相乗効果となってフォルシアのバリューになっていたと感じますし、それは今も変わらないと自負しています。

ー 20年近く前からすでにフォルシアの開発スタイルの原点が存在していたのですね。現在も当時のWebサイトは残っているのでしょうか?

数年前に新しい仕組みに生まれ変わったので、残念ながら今は当時のWebサイトは残っていないですが、10数年以上の長きにわたって根強いファンに愛され続けました。

当時新しいとされていた点は、①社内に埋もれる膨大な情報を可視化したこと、②数百件以上のこだわり条件から宿泊施設やプランを様々な切り口で検索できること、③非同期通信でページを切り替えることなく高速に検索できること、この3つが挙げられます。ユーザーからすると②と③が叶えられる旅行予約サイトは稀有だったため、非常に重宝されましたね。

ー ②も③も現在では当たり前のことですが、当時は実現が難しかったのですね。

難しかったですね。このときの成功は社内でも高く評価され、新しいサイトの立ち上げをするきっかけになりました。その立ち上げにあたっては検索システムとしてフォルシアのSpookが全面的に採用されました。

そういえば、今のフォルシア社員はあまり気に留めていないかもしれませんが、フォルシアのオフィスの壁に貼ってある「七色のタイル」はCEOとCOOが最初にプレゼンテーションしたデモサイトをモチーフにしています。私の座席からもよく見えるのですが、たまに懐かしいなとふと思い出します。当時のSpookといえば「七色のタイル」でした。

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七色のタイルと大西取締役

ー そのエピソードを知らずに、そういうデザインの装飾だと思っている社員もいるかもしれないですね・・・!大西取締役がフォルシアに参画して、旅行関連会社のWebサイト構築を支援する側になって気が付いたことや、顧客側にいたからこそ意識されていることがあれば教えてください。

まずは、お客様のビジネスを知ることが基本中の基本です。同じ業界であってもお客様の会社ごとに常識が異なることは往々にしてありますし、会社の風土や文化・考え方にあわせた提案やシステムが必要なこともあります。お客様ごとにビジネスの成功の物差しは異なるので、我々はあくまで黒子としてお客様のビジネスの成功を支援するのだということを意識するようにしています。 

また、プロジェクトの初めから何を実現したいかが決まっているお客様ばかりではないので、最初に「これを実現したい」と言われたものをそのまま作ることが最善ではない場合もあります。想像力を働かせて、お客様が本当に実現したいことを引き出して、いかに期待以上のものを実現できるかが大事です。

お客様のビジネスへの理解を深めることがお客様に最適なサービスを提供することに直結しますね。
後半では、今後フォルシアはどのように旅行業界を支えていくのかについて話を聞きます。

旅行業界の変化にどのように対応するか

業界の転機到来

ー この数年新型コロナの流行によって旅行関連会社の風向きが大きく変化しました。旅行関連会社のWebサイトを支援するフォルシアが影響を受けたエピソードはありますか?

複数の地域で緊急事態宣言が発令されていた第一波の頃は我々の旅行業のお客様方も最小限の営業をしていました。ですのでその間に、普段なかなかたくさんはお話しできないお客様とじっくりお話しする機会ができました。お客様にとっては大変な時期であったと推察しますが、ポジティブに捉えるとその間に今後のWebサイトについてロングスパンで考えていただける機会ができたのはよかったと思っています。

コロナが流行したからこそ、これまで手をつけたくてもできなかった諸々の課題に向き合って見直さないといけないということになったのではないでしょうか。

たとえば、政府の施策として2020年秋にGoToキャンペーンがスタートし電子クーポンが始まりました。その際、フォルシアのお客様から「同じようなことを独自で検討したい」というご相談をいただきました。そのことがきっかけで、フォルシアの電子クーポンの話がスタートしました。コロナは旅行・観光業界をはじめ様々な業界に多大なる影響を与えたということは紛れもない事実ですが、個人的には世間一般で持たれているネガティブなイメージよりも、ポジティブに受け止めて新たなビジネスに取り組まれている話が多い印象です。あまりニュースにはならないですが。

ー 各業界共通で、新型コロナ流行が今後のビジネスの形態を考える一つのきっかけになったという面はありますよね。具体的に、フォルシアとして旅行・観光業界にできることは何だと考えていましたか?

実はコロナが流行する前のタイミングで、これまでの旅行会社の販売形態が大きく変わっていくことを認識していました。SaaS型の商品販売プラットフォームである「フォルシア webコネクト(以下、webコネクト)」は、各社のシステム導入ハードルを下げて、もっと幅広い旅行会社にシステムを提供できるサービスとしてコロナ流行前にローンチしていました。

その意味では当初の想定ではSaaS型のwebコネクトはあくまで汎用性を重視した取り組みとして考えていたので、大手旅行会社の深いニーズへは従来どおり受託開発のSpookで対応することを考えていました。

ところが、コロナによって大手旅行会社の考え方も大きく変わり、それまで独自性を追求されていた大手旅行会社からもぜひSaaSサービスを利用されたいとのお声をいただくようになりました。我々もSaaS型のwebコネクトのコンセプトを見直して、大手旅行会社の利用にも耐えうる機能の拡張を目指し、さらなる開発を進めています。

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お客様と一緒に創る「webコネクト」

ー 「旅行会社の販売形態が変わっていくことを認識していた」というのは、コロナ流行前の19年に、その翌年に大手航空会社が国内旅行商品に変動運賃を適用することが発表されたことを受けてですね。その対応策として開発されたwebコネクトについて、どのようなサービスなのか教えてください。

簡単に言ってしまうと、旅行商品をオンライン上で売るためのシステムを手軽に構築できる、旅行・観光事業者向けのプロダクトです。様々な情報を使いたい人と提供したい人が一つのエコシステムに参画して情報を自由に使ってもらうためのビジネスハブを目指しています。

大手航空会社の旅行商品用運賃の変動運賃化に伴い、固定金額のパッケージツアーを販売するのが困難になるという流れの中で、宿泊施設と交通機関をオンライン上で組み合わせてセットで販売できるシステム(ダイナミックパッケージ)を簡単に導入できるようにというニーズから生まれました。

当初は宿泊施設と交通機関の「コネクト」からスタートしましたが、最近ではレンタカーや観光入場施設のような現地観光素材から物販、さらには新型コロナ流行により急速に導入が進んだレストラン予約やサービスECまで、様々なものを「コネクト」してまとめて予約決済できるよう、開発を進めています。もちろん単独でも予約・決済できます。対象となる形態も、ダイナミックパッケージから、宿単品、着地単品などの単品販売や、電子クーポンのようなサブシステム単独まで、提供可能範囲が広がっています。

ー フォルシアが長年、メインでサービス提供していた受託開発であるSpookと、どのような点が異なるのでしょうか?

Spookはいわばオーダーメイド品。ベースとなる検索プラットフォームを使いながら、お客様ごとのご要望やニーズに沿って最適なシステムを受託開発でご提供するモデルです。一方webコネクトは、「コネクト」に必要と思われる機能はあらかじめ我々が準備しておいて、お客様には「必要なシステムの機能を必要な範囲で」ご利用いただくサービス提供型モデルを基本としています。これは、個々のお客様と向き合って積み重ねてきた実績とノウハウがあるからこそ実現できたものだと言えます。

webコネクトは様々なお客様がご利用される事を前提として、あらかじめ一定の範囲でカスタマイズできるように意識して効率的な仕組みを作っています。そのために我々の方で「お客様が必要とする機能のあるべき姿」を見定めたうえで、あらかじめ仕組み化するもの・しないものを見極めて提供をしています。

ー オーダーメイドと異なり、SaaSサービスは一般的には利用されるお客様にとって付加価値を付けることが難しいとされますが、どのように付加価値を付けていきますか?

元々Spookは受託開発でありながらも「一般的なパッケージよりも柔軟性があり」、「オンプレミスのシステムより短期間で導入できる」という点が特徴です。webコネクトはこの考え方をさらに進めて、「一般的なSaaSサービスよりも柔軟性があり」、「オンプレミスのシステムより短期間で導入できる」SaaSとオンプレミスの良いトコ取りができて、さらに「最適なインフラもセットで含まれる」ことがメリットと考えています。

コストを抑えるためになるべく共通機能を使っていただくことも可能ですし、必要な機能について個別開発をご要望されるお客様にはその部分について受託開発で対応することも可能です。

ー 共通機能というのはフォルシアがあらかじめ準備しておく標準機能のことですよね?標準機能にない機能はすべて個別開発を行うということでしょうか?

お客様からいただく要望について、それが個別の要望なのか、中長期的な観点で業界共通で必要とされる要望なのかを踏まえて判断しています。業界共通で必要な要望であれば、それらを各社共通の標準機能としてプロダクトに実装していきます。もちろん検討にあたっては「お客様と一緒に創る」というフォルシアの開発スタイルのもと、「お客様の声」を受け止めながら進めていきます。業界共通で必要とされる機能はどんどん標準機能に取り込んで、webコネクトを成長させていければと考えています。

「コネクト」するシーンは日常にも

ー 旅行業界の幅広いニーズに応えられるように進化しているのですね。それでは、最後に今後の展開について教えてください。

webコネクトは元々フォルシアの強みを最大限に生かしたSaaS型サービスということで、検索領域からスタートしましたが、お客様の声を踏まえて、素材登録や予約などの領域への展開を進めていました。いよいよ2023年に公開される予定です。

また、利用シーンについても、旅行・観光という非日常のシーンのみならず、日常のシーンでもwebコネクトを提供していきたいと考えています。昨今、混雑分散や非接触の観点で事前予約・決済・キャッシュレス化が進み、様々なオンライン上での予約・決済サービスであるサービスECが登場しています。便利になった一方で、各社の予約手順や決済方法が異なり、慣れていないと使いにくいという声も聞きます。今後はそのような「コネクト」のニーズがあるであろう日常のシーンにもサービスを提供して、多様な業界の課題解決をしていきたいですね。

まずは様々な機能を拡充させながらwebコネクトのビジネスを進めつつ、今後はアライアンスを含めて、様々な形で社会基盤の一端を担う裏方の役割ができればと考えています。そのためには「お客様の声」が何よりも原動力になるので、より一層お客様とコミュニケーションを取って、潜在的なニーズもしっかりとくみ取っていければと思います。

役員プロフィール

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取締役 営業統括 大西 孝明
前職の国内最大手旅行会社ではホームページの編集長などを歴任し、旅行予約サイト立ち上げなど旅行販売サイトの構築・運営を一貫して手掛ける。宿泊・ツアー・ダイナミックパッケージサイト等の構築後、11年フォルシアに参画し営業部長を務め、2018年より現職

※所属は2022年12月現在のものとなります

さいごに

大西取締役、お話ありがとうございました。

新型コロナ流行後、ユーザーの検索、予約、旅行そのもののあり方がさらに変わったことを実感します。大西取締役が旅行会社でWeb販売を担当していたときに感じたフォルシアの良さを失わずに、これからも旅行業界の進化を支えていければ幸いです。

次週更新する最終回では、フォルシアの技術を支えるエンジニア集団を管轄する役員に話を聞きます。お楽しみに!

この記事を書いた人

見原 麻里子

経営企画室・広報担当。
今日は冬至。年に一度の柚子湯が楽しみです。