リモートでも活発な意見交換を Jamboardを活用したオンラインディスカッションの取り組み
こんにちは検索プラットフォーム部エンジニアの伊藤(亜紀)です。 今日は、社内の意見交換の活性化を目的として始めたオンラインディスカッション(以下Jamboardディスカッション)について、その内容や始めた経緯、工夫をご紹介します。
Jamboardディスカッションとは
フォルシアでは、週に1度、エンジニアのほぼ全員40人程度が参加して、情報共有ミーティング(WEBミーティング)を行っています。 今年の10月より、そのミーティングのなかで、フォルシアのビジネスや日々の仕事を見直し、改善していくためのディスカッションを始めました。
進め方
大勢が参加するWEBミーティングであっても各人が意見を表明しやすいように、Google Jamboadのブラウザアプリを利用しています。
※Jamboardについて検索すると、専用ハードウエアを使って云々という説明がたくさん出てきますが、ブラウザからもJamboardを閲覧・編集することができます。
最初に、ファシリテーターがその月のディスカッションテーマの背景について説明します。その後、全体に向かって問いを投げかけ、それに対する答えを参加者がその場でJamboard上の付箋に書いていきます。 ある程度答えが出揃ってきたら、ファシリテーターがいくつかの意見をピックアップして、「詳しく教えてください」「理由を教えてください」といった深堀りをしていきます。 ファシリテーター以外のメンバーも、気になることがあれば適宜「その点はこう考えた方が良いのでは?」「これはどういう意図ですか?」といった質問や指摘をしていきます。
30分弱ほどで1~2つの問いについての付箋記載→深堀りを繰り返し、次の週は続きの問いからスタートします。
ディスカッションを始めたきっかけ
フォルシアにおけるコミュニケーション
元来フォルシアは「同じ場所で時間を共有して互いの人となりを理解すること」や「社員が部署や役職を超えて話をすること」が仕事にも良い影響を与えるとの考えのもと、福利厚生や社員発案のシャッフルランチなどにおいて、社員間のコミュニケーションを活性化させる取り組みを積極的・継続的に行ってきた会社でした。 それが、2020年度はコロナ禍により、こういった対面の活動は大幅に縮小せざるを得なくなりました。
業務そのものについても、在宅勤務で業務を遂行することはできますが、他社員の考え方や置かれている状況・取り組んでいる課題について、さりげない雑談やそれとなしに耳に入る会話から知る機会は大幅に減少しました。そういった情報を「些細な情報」「余計な情報」とする見方もあると思いますが、フォルシアではそういった情報に価値を見出してそれまで社員全員のデスクをひとつの執務室に集めていたこともあり、私個人としてはこの変化はフォルシアにとって大きな変化に感じられました。
特に、他のチームで起こっている問題や困りごとに触れる機会が減ると、自分たちのビジネスや業務プロセスを"全社視点に立って"改善していこうという気持ちにもなりにくい、というのは私自身在宅勤務をしながら痛感しており、課題意識を感じていました。
各人が意見を表明し、他者が見ている景色を知る場としてのディスカッション
そんな課題感について上長と相談したところ、始めることになったのが、このJamboardディスカッションです。 大勢が集まる場で込み入った議論はできないまでも、共通のテーマに対して各人が意見や経験を話すことで、
- 誰もが意見を表明し
- 他者の多様な意見から、自分には見えていない現実の景色や新しい視点を知り
- その新たな視点をふまえて、現在のビジネスや業務プロセスを見直す
そんな機会を作りたいと考え、Jamboardディスカッションを企画しました。
ディスカッションテーマ
これまでの開催テーマをご紹介します。
- 10月:ロイヤリティビジネスの今後
- フォルシアのメインプロダクトSpookは、一般的な受託開発ではなく、長らくロイヤリティビジネスの形態をとってきた点に特徴があります。昨今の「サブスク」浸透や、今年はフォルシア創業から20年目の節目であることもふまえ、フォルシアのロイヤリティビジネスの今後を考えるために、まずは「今」を再確認する機会を設けました。
- お題
- 問1:ロイヤリティビジネスの形態によって、私たちはどのような恩恵を受けているでしょうか?
- 問2:ロイヤリティビジネスの形態によって、私たちはどのような制約を受けているでしょうか?
- 問3:ロイヤリティビジネスの形態によって、私たちが提供できている価値はどのようなものでしょうか?
- 11月:どうやっている!? 運用保守
- フォルシアでは開発と運用保守で担当エンジニアを分けず、1人のエンジニアが両方を担当します。両方を担当することで広い視野に立ったエンジニアリングが可能な一方で、性質の異なる両タスクを並行して進めていくのには特有の難しさもあります。そのなかでも運用保守について、各人の取り組みを問いかけてみました。
- お題
- 問1:運用保守として、どのような対応をしていますか?
- 問2:運用保守対応で、難しいと感じること・悩むことは何ですか?
- 問3:運用保守対応で、心がけていること・工夫していることを教えてください。
投げかける問いは、あえて「現実の確認」にとどめる
「より良くするためには」「これから何をやっていくべきか」といった直球の議論をしたい思いは強くありましたが、そういった課題感は問いの背景として触れるにとどめ、問いはあくまでも「各人が見ている現実」を書いてもらうものとしました。 具体的には、投げかけを「ほぼ誰でも少し考えれば答えることができて、人によって違った答え(または同じ答えでも違った理由)が返ってくるであろう」問いに絞りました。
これは、もともとは
- とにもかくにも参加者に付箋を書いてもらわないと始まらない。そのためにアウトプットを出すハードルをできる限り下げたい
- でもせっかく大勢で話すからには意味のある場にしたい。だから最低でも「他者の視点」は参加者が持ち帰ることができるようにしよう
との考えでやっていたことでした。改善案までたどりつけたら文句なしに素晴らしいですが、限られた時間のなかでは欲ばりすぎず「背景課題の存在や、それを取り巻く状況を、ディスカッション終了時点で理解してもらえたらそれでOK!」と考えることにしました。
しかし何度かディスカッションを重ねているうちに、これはアウトプットのハードルを下げるだけでなく、改善や何か新しい取り組みを始めようというときに、とても大事なステップなのだということに気づきました。
いきなり課題の絞り込みや解決に取り掛からずに、「背景課題を取り巻くあれこれを各人がどう見ているか」にとことん焦点を当てたことによって、「ぱっと想像できる以上に、周囲の人は皆違った景色を見ているし、違った現実認識をしている」ということを改めて認識させられるとともに、背景にあった課題がより手ざわり感のあるものになったように感じられました。
どんな課題も他者と協力して解決していく必要がありますが、協力のためには、そのよすがとなる共通の認識や感覚・経験が必要です。 頭ではそうとわかっていても、そのことを忘れて(自分が興味がある)課題にいきなり取り掛かろうとしてしまうことが個人的には多かったのですが、「背景課題を取り巻くあれこれを各人がどう見ているか」についての問いと回答は、そのよすがのようなものを作る役割を果たしてくれるものになるように感じました。
開催してみて
正直なところ、やってみる前は「リモートかつ大勢で活発な議論ができるものだろうか」という心配とともにスタートしたのですが、これまでのところ、実際には予想を大きく上回るたくさんの意見・経験談をもって開催してきています。 ファシリテーションは難しい(!)ですが、周囲のフォローにも助けられ、私自身非常に学びのある時間になっています。
Jamboardディスカッションに参加した社員からは、
- 「会社としてなぜこのようなやり方をしているのか」など在籍年数によって知識量に差が出がちだが、経緯となった事例がわかってよかった
- 難しい問いもあったが、自分が普段苦労していることなどはたくさん付箋を書くことができた
- 様々なバックグラウンドの人がいるなかで、前職の経験をふまえた話をきけて興味深かった
といった声をもらいました。
最後に
いかがでしたでしょうか。リモートワーク下でのコミュニケーションについては今後も様々な組織で模索が続くと思いますが、この事例がひとつの参考になれば幸いです。
12月分からは議題提起者を変えて、また新たな切り口からディスカッションを行っていきます。
伊藤 亜紀
2015年新卒入社。検索プラットフォーム部エンジニア。