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<日本旅行業協会様>業界初の試み 観光産業共通プラットフォーム構築への道のり

2023.08.24

webコネクト Travel 素材登録・素材管理

フォルシアが提供する商品販売プラットフォーム「webコネクト」。今回は、先日「観光産業共通プラットフォーム」を立ち上げたばかりの日本旅行業協会(以下、JATA)様に今回のプロジェクトの全体像についてお聞きしました。

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業界としても初の試みである今回のプラットフォーム開発。webコネクトを活用してどのようなことを実現しようとされているのか、ぜひご覧ください。

今回お話を聞いたお客様

一般社団法人日本旅行業協会(JATA)

国内旅行推進部 副部長
太田 雅之様

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※ 所属はインタビュー当時のものになります。

JATAの事業について

━ お客様の団体の紹介をお願いします。

JATAは、約1,100社の会員のもとで成り立っている組織です。旅行会社を代表する業界団体として活動しています。
ツーリズムによる新たな文化・価値の創造、環境保全への努力を通じ、持続的な経済発展と友好・平和な社会の実現に貢献することをポリシーとして取り組みを行っています。主な事業としては、世界最大級の観光イベントであるツーリズムEXPOジャパンの開催や、基調講演や分科会を通じて各社経営課題の解決に向けたヒントを得ることができるJATA経営フォーラムの開催などがあります。いずれも、業界全体の活性化につなげられることを目的としています。

「観光産業共通プラットフォーム」について

━ 先日スタートした「観光産業共通プラットフォーム」は、どのような取り組みなのでしょうか?

「観光産業共通プラットフォーム」は、宿泊事業者によって登録された施設の情報を集約して、参画している旅行会社が一元的に情報にアクセスできるプラットフォームです。大きく分けて、3つの情報共有の共通化を実現しました。1つ目は、災害情報。宿泊事業者は災害等発生時に被害状況をプラットフォームに登録すると、その情報が全国の旅行会社に共有されます。旅行会社は、従来、電話などで宿泊施設に対して行っていた被害状況確認を行う必要がなくなり、宿泊施設側も個別に対応する必要がなくなります。2つ目は、施設基本情報。宿泊施設は、プラットフォームに施設の基本情報を登録・更新することで、従来のように旅行会社毎に情報の提供を行う必要はなくなります。施設基本情報には、食事、風呂、館内設備など1,200項目以上の情報が含まれています。3つ目に営業情報。宿泊施設のイベント開催情報や提供サービス・館内施設の休止などの営業情報を旅行会社各社へ通知することができます。
このプラットフォームの活用で業務効率化が進めば、宿泊施設・旅行会社の双方での生産性向上や、高付加価値業務への人的リソースシフトが見込まれるものだと考えています。

「観光産業共通プラットフォーム」稼働前には、どのような課題があったのでしょうか?

元々、旅行業界では「宿泊施設から情報を取得して自社の仕組みに取り込む」という各社同じような業務に人工をかけているという課題感がありました。たとえば、地震が起きたときに、各旅行会社の危機管理担当者は、各々地震が発生したエリアにある宿泊施設に「貴施設に被害はありませんか?」と被災有無の確認の電話をかける。同じ業務を各社でやっていたのです。
一方、宿泊施設側も大変な状況である中、ひっきりなしにかかってくる電話に応対する必要がありました。しかし、このようなことは課題だと捉えられていたものの、「喫緊で解決すべき課題」だとは認識されていなかったのです。ところが、状況が一変したのは新型コロナの流行がきっかけでした。業界全体として収益がガクンと下がってしまった時期に、旅行商品の企画・販売業務など営業に関する業務が減っていく状況下で、旅行業界が生き残っていくには、これまでなかなか手が付けられてこなかった、各社が共通して行っている後方業務を協業しなくてはいけないという機運が生まれたのです。

━ 隠れていた課題がコロナによって前面に出てきたのですね。コロナ禍に立ち上げられた旅行業再生戦略会議では課題の本質をどのように捉えて、このプラットフォームの構想に至ったのでしょうか?

前述したように、コロナ禍において、これまでと同じように各社が各社毎に同じような後方業務をやっていたらいけない、というところから課題を洗い出しました。洗い出したいくつかの課題から「さて、どうしようか」という話が生まれたわけではなくて、あくまで前提にあるのは「今までの業務をもう一度見直す」という目的をもった旅行業再生戦略会議の存在。その会議体で見直したときに、営業や商品造成などの業務は個社で戦うべきだけど、そうでない、利を生まないボトムの部分で、各社同じような業務が発生しているのであればそれらはまとめた方が良いという考え方がしっくりきました。同会議体で示された、旅行業再生に向けた提言の一つに、「協調/共創」という言葉があるのですが、まさしくそれですよね。今回開発したプラットフォームは「協調/共創」の理念を具現化したプラットフォームなのです。

━ 利を生まない部分の業務は共通化してしまう、という取り組みは業界問わず革新的ですよね。実現に至るまでのハードルは高かったのではないでしょうか?

はい、かなりチャレンジングでしたね。旅行業界では以前からボトム部分の業務は共通化してしまえれば良いのに・・・という声を少なからず耳にしていましたし、私自身もそのように思っていた一人です。でもそうはいっても、それぞれの事情やこだわりがあるので協業はなかなか難しく、アッパー部分で戦う日々が続いていました。そんな中、コロナで業界全体が困難に陥って、言い方は悪いかもしれないですが、半強制的に「背に腹は代えられない」状態になりました。緊急事態宣言が発令されて外出制限が続いたときには、大げさではなく、旅行業界は「生きるか死ぬか」の瀬戸際にいました。売上がほとんどないのに人件費はかさむから人を減らさないといけない、というようなことが続く。旅行業界にとって苦しい時期でした。大変苦しい状況下で、少しでも前に進もう、できることからやっていこうという前向きな思いで、前述の「協調/共創」の提言を行いました。

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━ フォルシアとプロジェクトを進める中で印象的だったことはありますか?

フォルシアの担当者の皆さんは、ITについてだけでなく旅行業の事情にも詳しいので、多岐にわたることを相談しました。私たち旅行業界では、0 or 1 ではなく、1.1も1.5もある。そういう細かいところを加味してどうするのが良いかという話をフォルシアさんが丁寧にしてくれたのでスムーズに進めていけました。旅行業再生戦略会議の提言がなされ、そこから具現化しましょう、とプロジェクトが立ち上がったのが1年ほど前でしょうか。webコネクトだけでは実現できないことも含めて、本当に色々なことに対応してくれたことによってこのプラットフォームが完成しました。フォルシアの担当者の方々がいなかったらここまで来られていなかったと本気で思っています。

今後の展望

━ 今後のビジネスの展望を教えてください。

旅行業界の中には、今回の件の他にも共通化できるような後方業務を行っている事例はたくさんあるはず。ただ、そこに対してはまだスポットライトが当たっていないこともあって、個社でやるのが当たり前と諦めてしまっている状態です。旅行業は元々薄利多売な業界ですが、新型コロナの流行で薄利に拍車がかかりました。このような状況下では益々ボトムの業務は効率化していかないと。チャンスは今しかありません。まだ私が気が付いていないだけで目を付けないといけないところはたくさんあります。そこにスポットライトを当てていきながら、旅行業界の非効率な業務の受け皿になれるようなプラットフォームにしたいと思っています。

また、海外旅行や国内旅行、訪日旅行、社会貢献というそれぞれ課題があり、今回スタートは国内旅行の部分でしたが、共通プラットフォームは最終的には国内だけでは終わらないと思っています。各旅行会社の業務を共通化しようというのが今回のプラットフォームの基本的な考えなので、それは国内だけではなくて、海外でも同じ。多言語化に取り組めば、訪日の旅行会社を対象にしたり、海外の宿泊施設情報も取り込めたりしますよね。ゆくゆくは全体をまたぐようなプラットフォームになり得る。「観光産業共通プラットフォーム」という名前にしているのにはそのような展望が含まれているからでもあります。国内旅行だけの共通プラットフォームではなくて、観光産業全体の業務を達成するためのプラットフォームになるつもりで取り組んでいます。

━ 最後に、このインタビューをお読みになる方にメッセージをお願いします。

やっとここまで来ましたと声高らかに申し上げたいところですが、実際はまだまだこれから。登録宿泊施設数も参画旅行会社数も目標数に対して見るとまだ十分には集まっていません。ただ、鶏が先か卵が先かという話で、まずは共通プラットフォームを生み出して、そこから集まってくる人を増やさないといけないし、集まってきた人たちに対して機能を集約していかないといけません。そういう意味では、まずは生むということが重要だったので、第一関門は突破しました。
私たちは「協調/共創」の理念を掲げて今回のプラットフォームを立ち上げています。皆さん、多少の思いの違いはあるとは思いますが、ぜひプラットフォームに参画していただきたいです。プラットフォームに参画していただくことによって、次に生まれることもあるかと思います。観光産業全体の高度化のために共に取り組んでまいりましょう!

団体プロフィールご紹介
一般社団法人日本旅行業協会(JATA)


旅行業務の改善やサービスの向上を図り、旅行の促進と観光事業の発展を目指す旅行会社1,100社にて構成される業界団体。

一般社団法人日本旅行業協会(JATA)Webサイト
https://www.jata-net.or.jp/

観光産業共通プラットフォーム 特設サイトは下記よりご覧ください。
https://www.jata-net.or.jp/membership/page-33373/commocplat_tplatform/